恐怖!?の減損損失
初回のテーマはいきなり、「減損損失」というものを取り上げます。
「減損損失」が必要になると、会社の利益が黒字から赤字になるなど結構インパクトが大きかったりするのですが、この減損損失をするかどうかの判断も難しいケースが多いんです。
こんなインパクトが大きいのに、判断も厄介という困った!?ものなんですが、この「減損損失」は何ものなのかを、順を追って解説していきます。
- 減損損失を一言で言うと何か!?
- 「投資の失敗」!?
- 「減損損失」が出てくる時とは!?
- ①投資額を回収できなくなるようなシグナル(減損の兆候)とは!?
- ②回収できそうな金額はどうやって計算するのか!?
- 「減損損失」の判断で何が厄介なのか!?
- まとめ
- 補足
減損損失を一言で言うと何か!?
ずばり減損損失を一言で言うならば、「投資の失敗」を将来に先送りしないために行われる会計上の処理です。
「投資の失敗」!?
ここで言う「投資の失敗」は、機械設備などを買って投資した金額よりも、その機械設備などを使って得られる収入が少ない状態になってしまうことです。
通常のビジネスですと、投資した金額以上の収入を得て利益を得るというのが当たり前と言いたいところですが、現実的には、投資した金額以上の収入を得て利益を得ることができずに失敗してしまうケースも多々あります。
こんな状況はなかなか認めたくないんですが、会計(財務諸表を作る)処理上は、損はできるだけ早く認めて、利益は本当に決まりそうな時に処理するという考え方(保守主義の原則)があるため、ある時、「減損損失」をしないといけない時が来る時があるのです。
「減損損失」が出てくる時とは!?
①投資額を回収できなくなるようなシグナル(減損の兆候)があり、②回収できそうな金額と回収しないといけない投資額を比較すると、投資額を全額回収できないと判断した場合、回収できないと判断した金額分を「減損損失」として処理することになります(減損の認識・測定)。
①投資額を回収できなくなるようなシグナル(減損の兆候)とは!?
投資額を回収できなくなるようなシグナル(減損の兆候)は、投資したプロジェクトが2年連続赤字になり、次の年も赤字になりそうな時や事業からの撤退を決めた時、法律などの規制強化により購入していた設備が使えなくなった時などです。 このような、もはや投資して買った設備などを使って投資額を超える利益を得ることが難しくなっていそうな場合には、会計処理上、「減損損失」をするかどうかのシグナル(減損の兆候)が出たと考えるのです。
②回収できそうな金額はどうやって計算するのか!?
投資額を回収できなくなるようなシグナル(減損の兆候)が出ていても、即「減損損失」が登場するわけではないのです。
シグナル(減損の兆候)が出ていると、次の段階として、投資した設備などを売り払ってお金に変えるか、使い続けて少しでもお金を稼いで投資した額を少しでも多く回収できるように通常は行動するだろうと考えて、多く回収できそうな金額を回収できそうな額と考えて計算するのです。
「減損損失」の判断で何が厄介なのか!?
「減損損失」を出すかどうかの判断にあたっては、2つ目のステップで売った場合の金額と使い続ける場合の金額を計算するのですが、まだ売った場合の金額は分かりやすかったりするんですが、使い続ける場合の金額を計算するためには、将来の予想をしないといけないのです。
この予想をめぐって公認会計士・監査法人による監査を受けている場合には、見解の対立があったりするのです。
そのため、最近、公認会計士・監査法人が出している監査報告書に記載された始めたKAM(監査上の主要な検討事項)と言う公認会計士・監査法人が特に気を遣ってチェックした項目として、この減損損失の判断が取り上げられやすくなっています。
まとめ
減損損失を出すことは、会社としては事実上、「投資の失敗」を認めるような状態になってしまいますのでできれば目を背けたいものですが、見方を変えれば、「投資の失敗」を認めた上で、心機一転、次のビジネスへチャレンジしていくきっかけでもあります。
「減損損失」を見かけた時にはそんなビジネス展開のターニングポイントに会社があると考えると、また違った見方になるかもしれません。
補足
今回、日本の基準と海外の基準(IFRS)との考え方を明示的に区分して解説していません。 厳密には、日本の基準と海外の基準(IFRS)では減損損失を出すまでのステップの詳細に相違点がございます。
詳細は書籍等でご確認ください。
今回は、少しでも多くの方に減損損失の考え方を理解していただけることを主眼として記載しているため、厳密な基準解釈等とは異なる場合があるかもしれませんが、ご容赦ください。